BLOGブログ
Something comes to mindあんなことやこんなこと

10

再求心性信号と感覚的評価の不確かさ

アレクサンダーテクニークとは

バーロウの本(姿勢が変わる・からだが変わる・生き方が変わる アレクサンダー・テクニーク W.バーロウ著/伊東博訳 誠信書房)にもフィードバックの記述はあります。「第3章バランスと休息状態ーバランスのとれた智恵ー筋肉のフィードバックp73」

けれども、難しくて読んでもわかりませんでした。そこで、先日読んだニコラス・ティンバーゲンの1973年のノーベル生理学・医学賞受賞記念講演「Ethology and Stress Diseases(動物行動学とストレス性疾患)」(by Google翻訳)に、似たような記述がありました。これならわかるような気がします。

こうした新たな発見の一つに、「再求心性信号(re-afference)」という重要な概念があります。単一の筋単位から複雑な行動に至るまで、様々な統合レベルにおいて、多くの動作が正しく行われているかどうかが脳によって絶えず監視されていることを示す有力な証拠が数多く存在します。脳は、「指令が実行された」ことを告げるフィードバック情報と、各動作の開始時にあらかじめ予測していたフィードバック(予測値)とを照合することで、これを行っています。予測されたフィードバックと実際のフィードバックが一致したときに初めて、脳は修正動作のための指令を送るのをやめるのです。⋯(中略)⋯しかし、アレクサンダーがさらに発見したのは、身体の筋肉を生涯にわたって誤った方法で使い続けると(例えば、座りすぎや歩行不足などが原因で)、このシステム全体に不具合が生じかねないということです。その結果、実際には状態に大きな問題があるにもかかわらず、脳は「すべて正常である」という報告を受け取る(あるいは、そのように解釈してしまう)ことになります。例えば、テレビの前で猫背になって座っているとき、本人は「楽だ(心地よい)」と感じていても、実際には身体をひどく酷使しているということが起こり得るのです。ここでいくつかの例をお見せしますが、それらは皆さんにとっても馴染み深いものでしょう。

One of these new discoveries concerns the key-concept of ‘re-afference’ . There are many strong indications that, at various levels of integration, from single muscle units up to complex behaviour, the correct performance of many movements is continuously checked by the brain. It does this by comparing a feedback report, that says ‘orders carried out’, with the feedback expectation for which, with the initiation of each movement, the brain has been alerted. Only when the expected feedback and the actual feedback match does the brain stop sending out commands for corrective action.⋯⋯ But what Alexander has discovered beyond this is that a lifelong mis-use of the bodymuscles (such as caused by, for instance, too much sitting and too little walking) can make the entire system go wrong. As a consequence, reports that ‘all is correct’ are received by the brain (or perhaps interpreted as correct) when in fact all is very wrong. A person can feel ‘at ease’ e.g. when slouching in front of a television set, when in fact he is grossly abusing his body. I can show you only a few examples, but they will be familiar to all of you.

ニコラス・ティンバーゲンの1973年のノーベル生理学・医学賞受賞記念講演「Ethology and Stress Diseases(動物行動学とストレス性疾患)」(by Google翻訳)

専門家ではないので、ここから先は完全にアレクサンダー・テクニークの視点からの解釈になります。

私たちは、なんらかの動作を起こす前に、脳がその動作を既に予測しているということです。実際に動く前から、頭で考えただけでその動作が始まっているというのはここだと思います。予測していたものと、実際の動作のフィードバックを比較して、一致していればその動作は正しいと判断し、一致していなければその動作は間違っていると判断します。そうして、その動作が正しいと判断するまで修正動作とそのフィードバックを繰り返すということです。

最初に予測したものが、実際に人間の組織体としてあるべきものであれば、問題ありません。この予測値が人間の組織体として間違っているものになってしまっているとどうなるのか。

既に長年の習慣となり、癖となってしまった、本来あるべきものではない動作があるとします。本来あるべきものではない動作ですが、そう言っているのはここでブログを書いている私であり、これを読んでくれている皆さんです。動作を起こしている本人はそうは思っていません。なぜなら、本人は動作を起こす前に予測しているものが、習慣となり癖となってしまったその動作だからです。そうしてその動作を開始します。フィードバックとその予測値を比べます。そうして、フィードバックが予測値に近づいて一致したなと思うまで修正動作を繰り返します。そのままその人に任せると、その人は習慣となり癖となったその動作に落ち着いてしまいます。

では、その人に言葉で「その動作は良くないよ、こうしたほうがいい」と、アドバイスしてみます。または、「こうやってみて」とやって見せるとします。その人は「ふんふん、そうか」と思ってくれるかもしれません。しかし、動作を開始する前に脳が予測するのは習慣となり癖となったいつもの動作です。その人はいろいろ試してみるかもしれません。しかし、いつもと違うことをすると、身体の中では予測値と違うフィードバックがくるので「なんか違う」と感じていつもの動作に向かってしまいます。

いつもと違うことを試してみたとしても、身体の中にはいつもの予測値と現在のフィードバックしかないので、いつもの予測値から外れていったとしてもどこが正しいのかわからないので結局いつもの動作に戻ってくることになります。仮にいつもの動作から離れたとしても、何が正しいのかわかっていないために別の間違った動作に移っただけということになりかねません。

そこで、アレクサンダー教師がやることは、手を使ってその人の身体に触れることで、「正しいのはこっちだよ」とガイドすることです。これはどういうことかというと、本人が動作を開始する前の予測値と異なるフィードバックを体験させて「こっちが正しいフィードバックです」と身体に教えます。それは予測値と異なるため、身体にとっては「間違っている」動作にしか見えません。

頼むから、わざと間違えようとしてみてくれ。万にひとつのチャンスで正しいかもしれないのだから。 アレクサンダー・テクニークある教師の思索 P18

動作を開始する前の予測値と起こした動作のフィードバックの位置づけを意識で逆転させないといけないのですが、そのためには動作を開始する前の予測値が間違っているのだと考える必要があります。アレクサンダー・テクニークで抑制(inhibition/インヒビション)するのはここです。ここで止まらないと、予測値が正しいと思い込んでいる身体はそれにしたがって修正動作を始めてしまうからです。

そうして、アレクサンダー教師から与えられたフィードバックに従おうとすると、慣れない動作のために、おそらく使えていない筋肉を使わなくてはいけないし、使いすぎている筋肉をやめさせないといけないしで、まずできません。そこで「やっぱりこれは違うんだ」と思い直して習慣となり癖となった動作に戻ってしまうことが多いです。ここは、「今まで使ってこなかった筋肉を使うため」と考え直して続ける場面です。今の私はだいたい1週間くらいで抜け出せるようになってきました。

この予測値がどうやって間違ったものになってしまうかがわからない、とニコラス・ティンバーゲンはこの後続けています。

しかし、私が思うに、この一つ上の段落で書いたことと同じことが起こっているのだと思います。つまり、「動作を開始する前の予測値と起こした動作のフィードバックの位置づけを意識で逆転させて、そのために動作を開始する前の予測値が間違っているのだと思い込む。」ことです。 動作を開始する予測値はもともと自分の中にあります。生まれたばかりの赤ちゃんだったり、まだ周りの影響を受けていない小さな子どもだったりです。それが、成長していくうちに周りの大人の影響を受けます。それは、怒られたり、褒められたり、教えられたりするうちに、自分の中にあるものが間違っていて、外から与えられるものが正しいとされる場面が増えていきます。それが全て理にかなっていて正しくて従うべきものであれば問題ありません。

けれども、大多数の人には分かっていることと思いますが、それらの外から与えられるものが全て正しいとは限らない、もしくはそれを自分なりに解釈して間違って受け止めてしまう、というところに問題が生じるのです。それは結果として、動作を開始する前の予測値が正しかったとしても、間違った動作のフィードバックを正しいものとして意識的に逆転させて、習慣とし癖としてしまうことです。子どもの頃にはしつけだったり教育の場面で(しつけや教育が悪いといっているわけではありません。その場面でそういうことが起こりうるということです。)起こりやすくなります。

大人になってもそういうことはよくあります。本・テレビ・youtube、仕事の仲間や家庭の事情など、自分を変えたほうがいい、もしくは自分を変えなくてはいけない、と考えた人は、良いと思ったものを取り入れていく。それが悪いといっているわけではありません。その中には間違った情報が混じっていることもあれば、受け止め方を間違えてしまう可能性もあるということです。独学の難しいところです。

そうして動作を開始する前の予測値が間違ったものになってしまった場合、アレクサンダー・テクニークでいうところの「感覚的評価は当てにならない」ということが起こります。正しいことを間違っていると感じるし、間違っていることを正しいと感じてしまうからです。そうして、それを変えていくためには、動作を開始するまえに一旦止まって考えることが必要になるのです。しかし、それは実は既にやったことのあることなのです。

masako

主婦であり串打ちの仕事もするアレクサンダー教師。 アレクサンダー・テクニークのレッスンを東京都目黒区にて楽しくわかりやすく、伝えていきます。 アレクサンダー・テクニークの理解につながるものはなんでもチャレンジ。ということで、現在は、歌(コーラス多め)、ダンス(soul&lock)、パントマイム(基礎)、をやっていますが、やりたいことが増えてきてます。合唱は高校のときから続けていますが、ピッチパイプを買ったのは最近です。これはハーモニカに似ていますが、吹き方によって音が下がってしまうので、ものすごく自分の使い方を試されます。 2023年9月 アレクサンダーテクニークスタジオ東京(ATST)の教師養成講座を卒業 2023年10月 STAT(英国アレクサンダー・テクニーク教師協会)認定教師の資格を取得 神奈川県立生田高等学校卒業 東京理科大学理学部応用数学科卒業 高校・大学・社会人と合唱を続け現在は楽器としての声を勉強中 1970年生まれ 1児の母

RELATEDたぶん、同じカテゴリーの記事だと思う

関連記事

PAGE TOP