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ブレーキをかけながらアクセルを踏むということ

アレクサンダーテクニークとは

アレクサンダー・テクニークで使うブレーキとアクセルの例えは、自分の間違った使い方を表現していて、「ブレーキをかけながらアクセルを踏む」という言い方をします。本来はアクセルを踏み、その踏み加減でコントロールするのが自分の良い使い方にあたります。しかし、意識的であれ無意識的であれブレーキをアクセルと同時にかけることが、本来起こそうとしている自然な動きを妨げるため、(ここでは車ではなく人間のことです。)必要以上にアクセルを踏むことが起こります。そこで打ち消し合う(とは限らないけど、拮抗して打ち消し合うときもある)、必要以上に踏んでいるアクセルと、本来はかけなくてもいいブレーキの力が、必要最小限を超えて生じた力であり、不必要で余計な緊張です。

Youtubeに載せたNotebookLMの音声解説からです。既に公開済みのものですが、私の説明に足りないところがあるのではないかと思うときがあります。動画中や概要欄にも書きましたが、ここでもう一度詳しく書いてみようと思います。架空の二人をCさんとDさんにします。

C:
あるいは硬いところはストレッチしましょうと。アレクサンダーテクニックはちょっと違う角度から見るんです。まず注目するのは働きすぎている筋肉の存在。

D:
働きすぎている。

C:
ええ、つまり不必要に頑張りすぎて他の部分の仕事までこう肩代わりしちゃってるような筋肉の過剰な緊張ですね。

D:
あ、 弱いところを鍛える前にまず頑張りすぎているところを休ませるみたいなことですか?

C:
そういう考え方ですね。資料にもありましたけど、ブレーキをかけながらアクセルを踏むような状態って

D:
あ、ありましたね。

C:
まさにこれです。頑張りすぎている筋肉つまりブレーキですね。それが緩むことで初めて本来働くべき筋肉アクセルが効率よく自然に働き出すことができる。

D:
なるほど。

C:
この不要な緊張、言い換れば妨害ですね。これを取り除くことが先決だと考えたんです。

Youtube(2025/9/21公開)Alexander Technique – Not a treatment or a procedure 治療でもない施術でもない (アレクサンダー・テクニーク徹底解剖:治療じゃない、マッサージ・医療・筋トレとどう違う?)から

途中のCさんは、「頑張り過ぎている筋肉がブレーキ」「本来働くべき筋肉がアクセル」だと発言しています。これはアレクサンダー教師が伝えたいことと違います。どのように違うのでしょうか。

声を出すときに喉を締めてしまうこと

声を出すときに喉を締めてしまうことを考えてみます。これは、声を出すときにその喉を閉める力が必要だと身体が思い込んでしまっていて、そこから生じる不必要な緊張が声帯の自然な振動を妨げています。そうすると、本来働くべき声帯が働いていません。それでも「声を出さなくては」という思いから、必要以上の力を使って声を出そうとします。

このときの、喉を締めて声帯の自然な振動を妨げているのが不必要なブレーキです。それでも、「声を出さなくては」という思いと、その思いから生じる、本来必要のない力が過剰なアクセルです。

関節を固めながら膝を動かそうとすること

日常的に膝の関節(特定の関節であればどこでもいいのですが、ここでは膝で説明します)を固めていたり、膝を動かすときにはその関節を固めないといけないと身体が思い込んでいると、膝を動かすと同時に膝の関節を固めます。やっかいなことに関節は固めていても動かせます。このとき、固めている膝の関節は、膝の自然な動きを妨げます。それでも「膝を動かさなくては」という思いから、必要以上の力を使って膝を動かそうとします。

このときの、膝の関節を固めて自然な動きを妨げているのが不必要なブレーキです。それでも、「膝を動かさなくては」という思いと、その思いから生じる本来必要のない力が過剰なアクセルです。

歯医者さんで口を開け続けること

歯医者さんで口を開けるときのことを考えてみます。(全員に当てはまるわけではないかもしれませんが、)顎を噛みしめる力を抜くことができないでいると、口を開けるときに、それに反発して口を閉じようとする力が働きます。けれども本人は「口を開け続けよう」という思いから、必要以上の力を使って口を開けます。

このときの顎を噛み締めて口を閉じようとする力が不必要なブレーキです。それに対して「口を開け続けよう」という思いと、その思いから生じる本来必要のない力が過剰なアクセルです。

レバーを串に刺す

レバーを串に刺すときのことを考えてみます。レバーをただ串に刺すだけでいいのですが、このときにレバーを潰さないようにしなくてはと思うと、自分の力を抑え込もうとする力が働きます。そして、肩肘手首(時には全身のことも)を固めます。そのために、レバーを刺すのに必要以上の力を使います。

このときの、「レバーを潰さないように」という思いが、肩肘手首(時には全身)を固めて抑え込みます。これが不必要なブレーキです。それに対して、レバーを刺そうとする動作がアクセルなのですが、身体を固めて抑え込まれているので、過剰なアクセルとなって必要以上の力を使います。

川の途中で小石や小枝、葉っぱなどがつまる

川の流れが遮られ水が滞るときのことを考えてみます。小石や小枝、葉っぱなどが流れてきて溜まるためだとします。このとき、つまっているところの前後では水の流れが滞り、流れが鈍くなり、時には流れなくなります。このとき、自然はなんとかして水を流そうとはしません。流れを遮っているものを押し流そうともしません。流れが遮られているのを受け入れています。別の言い方をすれば、遮っているものが流れ去っていくのを待っているとも言えます。大雨が降って水かさが増せば流れるかもしれません。もしかしたら、水の中の生き物がなにかの拍子に流してくれるかもしれません。

このとき、川の流れを遮っている小石や小枝、葉っぱなどがブレーキです。自然が起こしたブレーキなので、不必要かどうかはわかりません。川が自らブレーキをかけていないのは明らかです。その川が流れようとする力がアクセルですが、自然は意図的に必要以上の力でもってアクセルを踏むことはありません。大雨で流れるときも、それは必要最小限の力であり、水が再び流れれば、その力はもとにもどります。

ここまでの例で見てきたことから言えるのは、不必要なブレーキも「頑張り過ぎている筋肉」であり、過剰なアクセルも「頑張りすぎている筋肉」です。本来は必要ないのに、やらなくてはいけないと身体が思い込んでいることが不必要なブレーキとなって自然な動きを鈍らせ、それに対してやらなくてはいけないと思っている思考が必要以上に過剰なアクセルを踏ませるのです。このときの不必要なブレーキも過剰なアクセルも、必要以上の力を使っているし、本来働かせる必要のないところを働かせています。それが不必要な緊張です。

この不必要なブレーキが習慣になって長い年月がたってしまうと、過剰なアクセルも習慣になっていると考えたほうが良さそうです。そうなると、不必要なブレーキをやめようとしただけでは解決しません。過剰なアクセルも同時にやめる必要があります。


<本文中に関連するリンク>

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masako

アレクサンダー教師。 アレクサンダー・テクニークのレッスンを東京都目黒区にて 楽しくわかりやすく、伝えていきます。 2023年9月 アレクサンダーテクニークスタジオ東京(ATST)の教師養成講座を卒業 2023年10月 STAT(英国アレクサンダー・テクニーク教師協会)認定教師の資格を取得 神奈川県立生田高等学校卒業 東京理科大学理学部応用数学科卒業 高校・大学・社会人と合唱を続け現在は楽器としての声を勉強中 1970年生まれ 1児の母

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