「背筋をピンと伸ばして」「姿勢を良くして」「シャンとして」と言われたときにほとんどの人は、身体の筋肉を使って自分の身体を上に押し上げる動きをします。これは、吊橋でいうところの何をやっているのかというと、重力に負けて下に向かっていく塔を、周りのワイヤーで押し上げようとする動きです。
重力に負けて下に向かっていく吊橋の塔は、重力に対する反作用として上に向かう力を失っているだけです。塔を構成する、地上から積み上がっているものが、劣化してゆがむか崩れるか(専門家ではないので、言葉は違うかもしれませんが)して正しく積み上がれないでいるのです。そこを修復してしっかり積み上がれるようにすれば、塔は重力に対する反作用として上に向かう力を取り戻します。そうした結果として、たわみ緩んでいたワイヤーは張りを取り戻します。重力に負けて下に向かっていく吊橋の塔をもとに戻すのに、ワイヤーで押し上げるのは間違っているのです。塔がゆがみ崩れているのをそのままにしてワイヤーの張りを強くすると、ゆがみ崩れている塔が更に崩れていくのではなかと思います。しかし、現代人は自分の身体の外側にある筋肉を使ってそれをやろうとしてしまうのです。
その頃には、もちろん、ワイヤーも劣化と同時にたわみ緩んでいきます。ワイヤーもメンテナンスするために、ワイヤーを取り替えたり、切れそうなものは直したり、その後ちょうどいい強さの張り(張りは強ければ強いほど良いというものではないと思います。ワイヤーそのものが持っている壊れにくい強さとは違うものです。)にします。それでも、ワイヤーをちょうどいい強さの張りにするのは、塔のゆがみや崩れを直した後のはずです。
人間の身体も、重力に負けて下に向かっていくのは、足から始まり背骨と首を通って頭までつながる骨を含むその周辺の筋肉や組織が、重力に対する反作用として上に向かう力を失っているだけです。(事故や病気ではない)ゆがみや崩れのために積み上がれないでいる、骨を含むその周辺の筋肉や組織が積み上がれるように、そうして上に向かう力としてのupを取り戻すと(事故や病気ではない場合は、忘れていたupを思い出すだけでいいのです。身体はその機能をもっているはずです)、その結果として、ゆるみ働きを失っていた筋肉とその周辺の組織が必要最低限の緊張と拮抗を取り戻すのです(もしかしたら、必要最小限の緊張がどのくらいか忘れている可能性もあるので、これも思い出す必要はあるかもしれません。それでも、事故や病気で失ったものでなければ、身体はその機能をもっているはずです)。これが、「背筋をピンと伸ばして」「姿勢を良くして」「シャンとして」と言われたときに、言葉に惑わされないで、本来その身体に起こってほしいことです。
以前に、「身体の使い方を見直すときには、重力に対して直立するところから見直していけば間違いない」と書いたのと同じことではないかと思います。