病気・怪我がない場合の、「右脚を上げる」時のことを考えてみます。頭の中では「右脚を上げる」としか考えなくても、身体は覚えている全身の働きを発動させます。これを身体が間違って覚えていなければ、不要な緊張を伴うことなく良い自分の使い方でいられます。身体が間違って覚えていると、働いていない筋肉とその周辺の組織があったりその代わりに働きすぎている筋肉とその周辺の組織があったりして不要な緊張を伴い、間違った自分の使い方をします。
なぜ間違って覚えてしまうのか。生まれたばかりの赤ちゃんは、ちょうどよく働いている筋肉もないかわりに、働きすぎている筋肉もなく、どの筋肉をどれだけ働かせれば何ができるのかまだわからない状態です。それを、試行錯誤して立ち上がることを覚え、歩くことを覚えていきます。立ち上がって歩くことに不安も心配もない小さい子は自分や身体の使い方は良いと思います。そして、まだちょうどよく筋肉を働かせることが身についていないと、「右脚を上げる」ときにコケて怪我をすることもあります。コケて怪我をしないような自分や身体の使い方を身に着けていけばよいのですが、大きくなって怪我をすることを(大人に注意されることも含めて)恐れるようになると、「右脚を上げる」ときにコケないように踏ん張って関節や筋肉とその周辺の組織を緊張させることが増えてきます。最初は必要で役に立った緊張かもしれません。しかし、これが習慣・癖となっていくにつれて、そうする必要のない(他の対応の仕方がある)場面でも関節や筋肉とその周辺の組織を緊張させるようになります。ここで良かったはずの自分の使い方が不要な不安や心配で間違った自分の使い方に書き換えられていくのです。「右脚を上げる」ときに発動する、身体が覚えている全身の働きが間違ったものになっていくのです。
アレクサンダー・テクニークのレッスンでは身体が間違って覚えているものを見直していく作業です。他の対応の仕方があることを身体に思い出してもらうのです。このときの間違った自分の使い方は身体が覚えているものなので、無意識で自動的に働きます。これを見直していくには、無意識で働くものを意識に上げる必要があります。そうして、間違って覚えてしまった全身の働きをまた書き換えていくのです。ここの作業を手伝うのがアレクサンダー教師です。
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