アレクサンダー・テクニークで扱う痛めた身体というのは、事故や病気が原因ではないため、急激に起こった痛みではありません。
大抵は、良かれと思ってやったことを必要なくなってもやり続けたり、間違ったやり方をいいものだと勘違いしてやり続けたり、理由はさまざまです。が、いづれも時間をかけて気づかないうちに、気づいたら身体を痛めていたことが多く、そのときにはさまざまな要因が交錯して身体の状態をつくりあげています。
これをなくしていく過程はやはり時間がかかります。Penelope Eastenさんのホームページの入口に「工場出荷時の設定に戻す(return to ‘factory settings’)」という表現がありました。英語のホームページなのでgoogleの翻訳機能に頼ってますが、Penelope Eastenさんが伝えようとしていることと違っているかもしれないので、ここからは私の解釈です。人間なので、新しいパーツを持ってきて組み立て直すことはしないで、今までのパーツで「工場出荷時の設定」に戻します。
何十年も使い込んできた冷蔵庫や洗濯機を全てのパーツをそのままにして「工場出荷時の設定に戻す」のを想像すると、気の遠くなる作業です。一つのパーツをメンテナンスすると、全体のバランスが変わってきてそれを調整するために関係するあっちのパーツやこっちのパーツをいじる必要がでてきます。いったん始めると今までできたことができなくなることがあるというのは、これです。少し我慢すれば使えるものから、しばらくは冷蔵庫や洗濯機として使うことは無理なものまであります。時間がかかりますが、一旦「工場出荷時の設定に戻す」ことができれば、使いやすくなります。しかも、「工場出荷時の設定に戻す」戻し方も身につきます。実際には冷蔵庫や洗濯機のことをいっているわけではなく、使い込んできた身体を「工場出荷時の設定に戻す」という例えです。
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今までできたことができなくなることがあるということ
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