F.M.アレクサンダーは舞台で朗読するときに自分がやっている何かを見つけるために、鏡に映る自分を観察し続けました。そうして次の3つのことに気づきました。
1. 自分の頭を後ろへ引っ張る
2. 自分の喉を押しつぶす
3. 呼吸をするときにぜえぜえと音をたてて口から息を吸う
朗読しているときに、2と3をやめることはできませんでした。それでも1の「頭を後ろへ引っ張る」ことはいくらかやめることができたのです。さらには、1の「頭を後ろへ引っ張る」ことをやめると、2の「喉を押しつぶす」ことや、3の「音をたてて息を吸う」ことが減るということもわかりました。つまり、「頭を後ろへ引っ張る」のをやめると、喉の症状がよくなるということに気がついたのです。
つまりこれは、「頭をどのようにもっていくか」ということが、喉の状態を左右するということです。
観察を続けた結果、「頭をどのようにもっていくか」ということは実は「頭と首と背中をどのように使うか」ということであることがわかりました。それは、喉の状態を左右するだけではなく身体全体の機能を左右するということもわかりました。
これをアレクサンダー・テクニークではプライマリーコントロールと呼んでいます。F.M.アレクサンダーは自分の身体を観察することでこれを見つけました。しかしその後、様々な人にレッスンをすることでどの人にも同じようにプライマリーコントロールが働いていることを確信していったのです。医学的・科学的に現在これがどこまで解明されているのかはわかりません。しかし、アレクサンダー・テクニークでは経験から導き出された事実として扱います。
アレクサンダーの熱心な生徒であり信奉者でもあるアンドリュー・マードック博士は、身体的習性(からだの動き、振る舞い)におけるプライマリーコントロールというアレクサンダーが見つけた基本的な真実について、解剖学の言語でどのように説明できるのか、困難を極めていた。
アレクサンダー・テクニークある教師の思索P93,94
・・・中略・・・
彼は、AO関節(頭蓋と頚椎の接合点)に脊椎のてっぺんのまわりに集まる小さなひとつの筋肉群があることに気がついた。
・・・中略・・・
これらの小さな筋肉の機能は頭のバランスをとるためのものであると、主張した。
・・・中略・・・
これまでのところ、いかなる権威ある筋からも、マードックのこの学説は、証明も反証明もされていない。マードックが正しかろうとなかろうと、頭が首と背中との関係において正しく方向づけられるやり方は、からだ全体を通して筋肉の伸縮のありようを決定づける重要な要素であり、これによって、身体機能がはたらくのである。
今ではアレクサンダー・テクニークのレッスンにおいて外せない、常に心に留めておくべきことです。
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