F.M.アレクサンダーは舞台で朗読するときに起こる喉のトラブルの原因を自分で見つけようと決意しました。
鏡を使って自分を観察し続けた結果、喉の問題を軽減させるには、「頭を後ろへ下へ引き下げる」ことを防ぎ、「頭を前へ上へ持っていく」必要があること、をつきとめました。
大抵のの人はここで解決したと考えます。喉のトラブルを起こす原因とその解決方法がわかったのですから。
しかし、F.M.アレクサンダーは舞台で朗読するときに「頭を後ろへ下へ引き下げる」を防ぎ、「頭を前へ上へ持っていく」ことができませんでした。鏡を使って自分を観察したときはできるのに、舞台で朗読をするときにはできないのはなぜなのか。喉のトラブルが解決しない本当の原因が別にあるのではないかと、取り組んだのです。
その原因は大きく2つ。
1つ目、習慣の強い力
「頭を後ろへ下へ引き下げる」ことそのものを防ぐことはできるのに、舞台で朗読するときにはそれを防ぐことはできませんでした。それは習慣の強い力によって「舞台で朗読する」という刺激と「頭を後ろへ下へ引き下げる」という反応が癒着していたのです。考える間もなく、選ぶ余地もなく、「頭を後ろへ下へ引き下げる」というその反応が起こってしまうのです。
2つ目、感覚的評価の不確かさ
「頭を前へ上へ持っていく」ことが起こることはわかっているのに、舞台で朗読するときにはそれが起こりませんでした。それは感覚が当てにならないために、自分では「頭を前へ上へ持っていく」ことを起こしていたつもりでも実際には「頭を前へ上へ持っていく」ことは起こっていなかったのです。
実際には防ぐべきことも起こるべきことももっと広範囲に身体全体が関わります。思考もそこに影響を与えます。F.M.アレクサンダーはこれらを解決するために長い年月を費やしました。そうしてプライマリーコントロール(primary control)・抑制(inhibitioin)・余計な何かをしないこと(non-doing)・方向づけ(direction)などの言葉が使われるようになり、今のアレクサンダー・テクニークがあります。
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