先日、「はい、腹筋ー。」の掛け声とともにそこにいた数人で腹筋運動を始めました。そのとき驚いたのは、私は特に腹筋を鍛えるために何かをやっていたわけではないのに、大変ではなかったのです。アスリートのようなものではないのですが、多分、一般人としては楽にできたのでした。
それでわかったことは、腹筋が使えるようになるのも身体全体を使った結果なのだということでした。おそらく、最近背中を使うことを意識していたのでそこからできるようになったものと思われます。そうして、その場で数人が腹筋運動しているのを見て、腹筋が使えていないのを目の当たりにしたのです。きっと、身体全体が使えているどこかの誰かが、身体全体を使えていない人は腹筋が使えていないのだと気づいたのだと思います。それで、腹筋を鍛えよう!と言い始めたのだと想像します。手段と結果が逆転した瞬間です。
身体全体が使えている人は腹筋が使えている。これは合っていると思います。では、腹筋が使えている人は身体全体が使えているのでしょうか。ある動きができない人がいるとします。その人は腹筋も使えていないとします。ということは、その人はその動きをするときに腹筋を使う代わりに別のところを使って頑張っているわけです。そうして、それが習慣になっています。その人が腹筋をきたえました。ところが、今までやってきたその動きが始まった瞬間に身体は腹筋の代わりに今まで使っていた別のところを使い始めます。そこを使わないとその動きはできないと身体が思い込んでいるのです。
まず、その習慣をやめないと先に進むことはできません。そこで、アレクサンダー・テクニークではその反応が起こる前に一旦止まることから始めます。
しかし、腹筋運動が全く無意味ではないことも事実です。身体全体を使おうとする過程で役に立つかもしれないからです。しかし、それは腹筋運動を間違ってやらないことが前提で、腹筋運動のためにどこかを固めたりし始めると、今度は腹筋を使うときはそこを使わないといけないと身体が思い込んで必要のない新しい習慣を作ってしまう可能性があります。