今回は、麻痺のような神経系統に問題がない場合の話をします。私たちの身体は、前からあった自分の身体の静止状態を覚えているらしいです。そうしてそこからずれが生じると、その違いをとらえて、生じたずれを少なくしていこうとします。私たちが静止していると思っているものはこれで、自分の身体が覚えている静止状態のまわりをわずかに揺れながらバランスをとり続けます。
この相互作用の結果として起こるバランスは、物理学者が「恒常的な休止状態」(a steady resting state)と呼んでいるものの中にあるものなのです。1
姿勢が変わる・身体が変わる・生き方が変わる アレクサンダー・テクニーク p72
私たちが動くときも、この身体が覚えている静止状態との違いをもとにしながら身体が今の状態を解釈しながら動くことになります。
この身体が覚えている静止状態は、結局、自分が正常な休止状態と考えているものだそうです。これは、主観にあたるものなので、現実とは違う(正常ではない)かもしれません。動くときは、これと経験を照らし合わせて解釈して動きます。
受容器・Rは、なんらかの理由で、私たちが正常な休止状態と考えているものをあらわしております。そのRをとおして私たちは、情報を受けとり、前から貯えている経験に照らし合わせて計算するのです。私たちはだれでも「身体概念」(body-construct)というものをもっておりますが、それは以前に学習したからだの経験によって作られているものです。そして、今時分に起こっていることを、この「身体概念」に照らし合わせて解釈する(構造を与える)のです。
姿勢が変わる・身体が変わる・生き方が変わる アレクサンダー・テクニーク p73
これらは身体の内部で持っている仕組みです。つまり目を閉じても、立ったり・座ったり・手や足を動かしたいように動かすことができます。経験によって作られた身体概念(ボディマッピング的なものか?)がどれほどクリアで現実と一致しているか、によって、動ける精度が変わってくるのではないかと思います。
ボディマッピング(私はボディマッピングに詳しくないので、だいたいの知識で書いています)はそのまま身体の地図であり、身体を動かすときのベースになります。この地図を勘違いしていると身体を動かすときになんかうまくいかない、ということが起こるらしいです。
自分の身体概念から、目を開けているときでも、手や腕を動かすときに手や腕を見なくても、手のひらが上を向いているのか下を向いているのか、肘はどのくらい曲がっているのか、がわかり、足や脚を直接見なくても、自分の右足のつま先がどっちを向いているのか、両足は開いているのか閉じているのか、がわかります。
ダンスのときに、ステップをふむのについ足元を見てしまうことがあります。多分私もやっていると思うし、確認したくなるのはわかります。けれども、本番で足元を見るわけではないので、足元を見ないでステップを覚える必要があります。そして、神経系統に障害がなければそれはできるのです。
- 本のcopyrightが1973年なので、当時の物理学者のことです。 ↩︎
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