「リラックスをしてください」と言われるときはどうのような時でしょうか。言われたら何をしますか。
「正していた姿勢を崩していいですよ」とか「緊張しなくていいですよ」という意味で使われることが多いと思うので、そのときのことを考えてみます。(そもそも、「リラックスしてください」と「正していた姿勢を崩していいですよ」が同じ意味になっているあたり、一般的なやり方《アレクサンダー・テクニークが求めているものとは違うという意味》で「姿勢を正している」と緊張して疲れてくるというのが周知の事実になっています。)
会議が長引いてずっと同じ姿勢を取り続けていたとき。上の立場の人と話をしていてかしこまっているとき。どちらも同じ姿勢を取り続けていて、恐らくまだ終わらなくてまだ続くとわかっているときに、そのような声掛けをされます。
そうしたら、声をかけられた人は何をするのでしょうか。このリラックスの意味を言葉にしてみると、「長い時間で心身が緊張していることでしょうから、その緊張を取り去ってもうしばらくお付き合いください。」と表現してみます。人によってとる対応はさまざまですが、これをアレクサンダー・テクニークの視点から見てみます。
心身のどこかが不要な緊張をしていたとします。身体がわかりやすいので身体からアプローチをしてみます。筋肉の不要な緊張を除くことにします。今までの筋肉の不要な緊張を除くと必要な緊張が残ります。必要な働きをしていない筋肉があると他の筋肉がお手伝いを初めてしまいそれが不要な緊張を生み出すので、その筋肉には必要な働きをしてもらいます。身体の不要な緊張は心の緊張が生み出していることもあるので、この時点でいくらか心も楽になっています。心身の心が何を表しているのか難しいのですが、感情(感情は「外界への内蔵の反応を脳が解釈したもの」)に準ずるものとして、内臓に変化を与える外部からの刺激とします。内臓の変化を落ち着かせるものは何があるのか、その場面でできることは限られています。ここではアレクサンダー教師として首は楽に・頭は前へ上へ・背中は長く広くなるようにして身体全体の機能がよく働くようにします。内臓の機能も良くなれば心も伴って良くなっていくと考えます。
ここからは、今までと同じような時間が続くと思われます。どのようにすればいいのでしょうか。「姿勢を崩す」というのは一見楽なように見えますが、姿勢を崩すために働かない筋肉があると、それをお手伝いするための筋肉がやってきて不要な緊張を始めます。実は、長く疲れないでいるためには、働き過ぎの筋肉から不要な緊張を除いてちょうどよく働かせ、働き過ぎの筋肉を呼び出さないために全ての筋肉には必要最低限の働きをしてもらうのが一番です。
そうして、最初から首は楽に・頭は前へ上へ・背中は長く広くなるように、全ての筋肉が必要最低限働くように、そうすれば身体全体の機能もよくなり、心身良い状態で長時間(個人差はあると思いますが)いられるというわけです。
そうすると、アレクサンダー・テクニークを取り入れた自分の使い方ができる人は何をもってリラックスというのでしょうか。自分の良い使い方ができる人でも、それを忘れる瞬間があったり、自分を見失って悪い使い方になっていくことがあります。なので、「リラックスしてください」と言われたら、自分の使い方が良くなるように見直すタイミングなのかもしれません。
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