首を縮めて固めると、身体全体の機能が悪くなり、動きが鈍くなることがわかっています。このとき固めていた首を緩めると、身体全体の機能が良くなり、動きも良くなります。頭と首と背中の関係が身体全身の機能を左右する、このことをアレクサンダー・テクニークの言葉でプライマリーコントロールといいます。
首の理想的な状態を、アレクサンダー・テクニークでは「首が楽になる」「首が自由になる」という言い方をします。英語では”Let the neck be free”となります。このときの首をアレクサンダー教師は「首が長くなる」という言い方をします。言葉を意味通り解釈できるのであれば「首が長くなる」=「首を短くしない」です。しかし、誰かに「首を短くしないで」と言われたら、普通の人は「今首を短くしているからそれをやめて」という意味に捉えてしまいます。しかし、アレクサンダー教師が「首を短くしないで」と言ったとしたら、その人が今首を短くしていることを注意しているのではなく、その人の首が長かろうが短かろうが、言葉通り、「短くしないでね」と言っているだけなのです。ここに誤解が生じやすいために、アレクサンダー教師は「首を短くしないで」という言葉を使わない傾向にあります。そこで、「首が長くなるように」という言葉が選ばれるわけですが、これも普通の人が聞いたら「首を長くしなさい」という意味に捉えてしまいます。アレクサンダー教師が言いたいのは「首を長くしてほしい」わけではなくて、「首を短くしてほしくない」だけなのです。
普通に前を向いているだけでもそうなのに、下を向いたり上を向いたりするときはどうすればいいのかわからなくなります。串打ちをしたり、肉を切ったりしているとずっと下を見ていなくてはいけません。しかし、「下をずっと見ている」=「首を縮めて固めている」ではありません。首の小さな一つ一つの骨の隙間ができるだけ広くなって(広くするのではありません)首を構成している筋肉の頑張りが最小限(ゼロにはなりません)となる場所がどこかにあるはずなのです。アレクサンダー教師の手はそれを教えるために置くのです。
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