アレクサンダー・テクニークでは、日常生活に行う動きを取り上げてレッスンすることがよくあります。立ち座り・しゃがむ・歩く・物を取る・投げる、その他いろいろ。けれども、レッスンで行うそれらはその動きの練習をしているわけではありません。
例えば、ボールを投げる動きは、次のことを一緒に考えるためにレッスンで使います。その一連の動きをするときに腕をどのように使っているのか。ボールを投げていない方の腕は何をしているのか。その時の脚は、目は、呼吸は、どうしているのかを観察して、不必要な緊張を伴っていないか。それを除いていくにはどうするのがいいのか。などなど。レッスンで不必要な緊張をとらえて除いていくことができるようになると、普段自分がやっている日常的な動き(ボール投げに限らず)の中で自分の身体で起こっていることに気がつくようになる、それをねらっているにすぎません。アレクサンダー教師が取り上げる動きは、普段自分がボールを投げるときと違う動きで戸惑うかもしれません。けれどもそこはあまり問題ではないのです。なぜなら、ボールを投げる練習をしているわけではないからです。普段ボールを投げるときにも、レッスンでやったようにボールを投げないといけないということではないのです。つまり、アレクサンダー・テクニークのレッスンで行うボールを投げる動きは、普段のボールを投げる動きを制限するものではありません。そうではなくて、日常的な動きの幅を広げるためのものです
同じように、しゃがむときも、日常的には様々なしゃがみ方があります。しかし、アレクサンダー・テクニークのレッスンでしゃがむときは、不必要な緊張に気づきそれを除いていくために行います。関節や筋肉とその周辺の組織を不必要に緊張させてロックしているとしゃがめないからです。普段自分がやっている日常的な動き(しゃがむことに限らず)の中で自分の身体で起こっていることに気がつくようになる、それをねらっているにすぎません。これもしゃがむ練習をしているわけではありません。日常生活でしゃがむときにも同じようにしゃがまないといけないということではありません。日常生活でしゃがむときの動きを制限するものではないということです。これも、日常的な動きの幅を広げるためにやっているのです。
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