アレクサンダー・テクニークのレッスンに通い始めた初期の頃のことです。首を楽に長くしていられることを教わりました。一応教わったので、いろいろなところで試してみるわけです。
一ヶ月に一回くらい顔を出していた大学の集まりがありました。何か役割があるわけでもなく、ただ参加しているだけでした。なので気楽なはずなのですが、当時は人の集まりの中に入っていくだけで苦痛だったのです。皆前を向いて座っている中空いている席を探して座るのです。それだけなのに意識の中でその背中から痛くて冷たいものが突き刺さってくるのでした。
そこで部屋の中に入るときに、首が楽で長くなることを試してみたのです。最初の一回はそんなでもなかったのですが、それを繰り返すうちに周りから突き刺さってきていた何かわからないものがなくなっていきました。その突き刺さってきていたものは自分の中で作り出したものだったのです。まだアレクサンダー・テクニークのレッスンは通い始めたばかりだったので、首のことしかやっていません。それでも違いました。
首を縮めて固めることが、それもずっと日常的に固め続けていただろうことが、心の邪魔をしていた一つの例です。
この首を縮めて固めることには最初は何か理由があったのかもしれません。しかし、アレクサンダー・テクニークはそういった昔のことに遡って原因をさがすことはしません。[集団の中に入っていく]という刺激が[首を縮めて固める]という無意識で自動的な身体の反応と一対一の関係になってしまっているので、その刺激と反応の癒着をはがすというのが、アレクサンダー・テクニークの考え方です。[集団の中に入っていく]という刺激がやってきたときに、[首を縮めて固める]という無意識で自動的な身体の反応を止め、その代わりに違うことかできるということを身体に思いだしてもらいます。そうして自分の使い方が良くなることで結果的に心も良い方に向かうのです。
<本文中に関連するリンク>
身体が心の邪魔をする(心と身体はつながっている)に関する記事