母音が発声されるということは、声帯が振動しているということです。そうして母音が変化しても声帯の振動が止まらないことが、母音同士が邪魔をしないということです。
子音には有声子音と無声子音があります。有声子音はZのように声帯が振動する子音です。有声子音と母音を行ったり来たりしても声帯の振動が止まらないことが、有声子音が母音の邪魔をしないということです。無声子音はSのように声帯が振動しない子音です。無声子音と母音を行ったり来たりするときはどうなるのでしょうか。無声子音のときは声帯は振動しませんが、そこで省エネモードになってしまうと母音の声帯の振動の立ち上がりが遅くなります。一見リズム感が悪く見えるのは実はこれが原因だったりします。無声子音が母音の邪魔をしています。母音の声帯の振動が違和感なく立ち上がるためには無声子音によって声帯の振動が止まっているときも、声帯が振動しているときと同じエネルギーを保って(計算できないけど、なんらかの物理的エネルギー保存の法則がある)いる必要があります。無声子音の度に省エネモードになっていては、母音の立ち上がりに時間がかかるからです。つまり、無声子音と母音を行ったり来たりするときは、声帯が振動しているときも振動していないときも同じようにずっと一定のエネルギーを保っているということです。
私もよくやってしまう、フレーズの終わりが安定しない問題。これも結局声帯を振動させるエネルギーが省エネモードになった瞬間にふよふよってなってしまうのです。そして、フレーズの最初も省エネから入ってしまうと声帯の振動に時間がかかり、テンポどうりに入ることができません。最初から声帯を振動させるエネルギーを持っていて、身体が納得して声を出す準備のためにも、声を出す前からそのエネルギーを持っている状態(なんと表現したらいいのかわかりませんが)に近づいて行く必要があります。近づいていく、と表現したのは、始まるときにいきなり声帯を振動させようとすると、声帯の振動が止まり続ける力がまだ残っているために力づくで声を出すことにつながるのではないかと思うからです。